建築家のリノベーション

» 2019/08/10/

伊月善彦のリノベーション


建築家

伊月善彦


店舗[ 徳島市]

HERBE DE MER

(エルブ ド メル)


「HERBE DE MER」の

店舗リノベーション。

イメージは“大人のカリフォルニア”

 以前あった天井は剥がしてむき出しに。「天井にはあまり照明をつけたくなかったし、荒い、ガレージのような雰囲気も表現できたと思います」(伊月さん)。


以前あった天井は剥がしてむき出しに。「天井にはあまり照明をつけたくなかったし、荒い、ガレージのような雰囲気も表現できたと思います」(伊月さん)。




オーナーとの共通認識は「カリフォルニアな感じで」

 2014年7月。中洲町にあった花屋さん『HERBE DEMER』が、徳島市役所のほど近くに移転オープンしました。オーナーの加藤さんと設計を手がけた伊月さんとの間には“サーフィン好き”という共通項があり、以前から親交のあった間柄。そのため、今回の店舗リノベーションを進めるにあたっても、感覚的な部分での意識を共有できていたそうです。そのスタート地点は、「カリフォルニアみたいな感じで」。



幸町公園の目の前という、その場所にある意味を考える

 以前は一般的なオフィスの事務所として使われていた建物。外観だけ見れば、「ショボかったなぁ(笑)」と伊月さんも苦笑するような建物でした。しかし加藤さんにとっては、「近くのうどん屋さんに毎日のように来ていたんですが、秋口、目の前にある幸町公園の銀杏の木がキレイに色づくのが印象的で。ここでお店ができればなぁと、漠然と考えていたんです」。

 かくして始まった店舗リノベーションでは、まずは公園に面した部分を大開口にすることが決まりました。

 「何よりもまず、この場所に店を構える意味と、店としてのあり方を考えるのが店舗設計の一歩目。『HERBEDE MER』に関して言えば、公園側に閉ざされた建物を最大限、開くことによって、店内に豊富な緑を取り込み、店舗の内側からも外側からも開放感を感じられるようにすることを考えました」(伊月さん)。

 もともと小さな窓しかなかった建物ですから、その壁を壊して出入口とすることに、ビルのオーナーからは難色を示されました。しかし、頑強な鉄骨ラーメン構造であること、当時の施工業者を呼んでその強度を説明するなど、入念な説得の末にGOサインをもらったそう。それだけ、その景観に、そして“この場所にある意味”に対するこだわりは譲れなかったのです。

 

荒々しく、でも子供っぽくはない。

バランス感覚の妙は建築家ならでは

 美装は、冒頭にあるように「カリフォルニアな感じ」で統一されています。言葉にすると抽象的ですが、それだけで、加藤さんと伊月さんの意識は共有されていたそう。北米の木造建築などでよく見られるシダーシェイクという仕上げ材を外壁に施したり、内壁には荒杉に白いペンキを塗ったり、また床には足場に使うような杉板を用いたり・・・と、随所に趣向が凝らされています。

 とはいえ雑な感じではなく、適度に荒々しく、かつ大人しやかな品の良さも感じさせる表現。これぞ建築家のセンスと言えるのではないでしょうか(センスという言葉も抽象的ではありますが)。

 「よくぞここまでしていただいたなと、ビックリしています。とても景観の良いところですし、中心部へのアクセス的な利便性も良い場所です。人通りが淋しくなりつつありますが、これを皮切りにウチのようなお店がたくさんできて、通りに、街に活気をもたらせられたら良いですね」(加藤さん)。

Before

室内から外の景観を望むことはほぼ不可能。この面の壁を完全に取り除い景観を取り込むことから、今回の店舗リノベーションが始まった。

室内から外の景観を望むことはほぼ不可能。この面の壁を完全に取り除い景観を取り込むことから、今回の店舗リノベーションが始まった。

一般的なビルの象徴的な入り口。暗く閉ざされた雰囲気もあり、「まさかこんなに開放的になるとは思いませんでした」(加藤さん)。

一般的なビルの象徴的な入り口。暗く閉ざされた雰囲気もあり、「まさかこんなに開放的になるとは思いませんでした」(加藤さん)。

 

after

床板の杉板は中古で購入。「足場に使われていたくらいですから強度は十分。雰囲気も味があるし、安くできるというのも魅力でした」(加藤さん)。

床板の杉板は中古で購入。「足場に使われていたくらいですから強度は十分。雰囲気も味があるし、安くできるというのも魅力でした」(加藤さん)。

大きなガラス戸とした入り口は大開口にすることが可能。光と風、さらには幸町公園の風景まで取り込み、清々しい店内に。

大きなガラス戸とした入り口は大開口にすることが可能。光と風、さらには幸町公園の風景まで取り込み、清々しい店内に。

魚のウロコのような仕上げになるシダーシェイク。1枚1枚が持つ表情が重なりあい、独特で、印象度の高い外観に。

魚のウロコのような仕上げになるシダーシェイク。1枚1枚が持つ表情が重なりあい、独特で、印象度の高い外観に。

商品を保管するプレハブの冷蔵庫。その出入口から作業台のシンクまでを最短距離とするなど、業務における動線も確保している。

商品を保管するプレハブの冷蔵庫。その出入口から作業台のシンクまでを最短距離とするなど、業務における動線も確保している。

通りに面するディスプレイはフィックス窓に。以前よりは大きく窓を取ることで、道行く人から覗いてもらいやすいように。

通りに面するディスプレイはフィックス窓に。以前よりは大きく窓を取ることで、道行く人から覗いてもらいやすいように。

大きな作業台は特注。「ゆくゆくはワークショップや、僕のパートナーによる料理教室を開催したりと、フレキシブルな空間にしたいと思っています」(加藤さん)

大きな作業台は特注。「ゆくゆくはワークショップや、僕のパートナーによる料理教室を開催したりと、フレキシブルな空間にしたいと思っています」(加藤さん)


加藤さんの夢を叶えた建築家

[建築家]

伊月善彦
伊月

設計コンセプト

「クライアントがHERBE DE MERデザインに求めたものは『大人のCALIFORNIA』のイメージ。幸町公園に隣接という好立地にも関わらず公園側に閉ざされた建物を最大限公園に開くことにより店内に豊富な緑を取り込み、外からも内からも開放感を感じられるように意図した。外壁にはアメリカでは古くから使われている『シダーシェイク』を採用した。内部も、壁:荒杉ペンキ仕上げ・床:杉足場板の古材とし材料の種類をおさえ仕上げかたを変えることにより、シンプルだが豊かな表現ができたと思っている」


設計のこだわり、苦労したところ

「開口が少なく壁で閉ざされたテナントであった。しかし周辺環境を見渡すと街中にも関わらず緑が豊富な公園が隣にあり、この公園と『同化すること』がクライアントとの最初の共通認識だった。設計では公園側の壁に対して大胆に開口をとる提案をした。クライアントには喜んで頂いたが、壁を壊すことに対してビルオーナーが建物強度を心配され一時ストップがかかった。私も建築家という職能上、強度に関して影響が無いという確信はもっていたが自身設計の建物ではないのでビルの施工業者を呼んでの検証・確認というやや大事の末VIEWを勝ち取った、という値打ちのある入口がこだわりの一品である。もう一点は『ディティールを懲りすぎない』という要求があったことである。ブティック的な繊細な納まりをあえて拒否し、荒く仕上げるが子供っぽくならない・・・というところが実は一番苦労したところであります。結果は一度お店に訪れていただくと良く分かって頂けるかと思います」


建築データ

■構造・工法

鉄骨ラーメン構造

■延床面積

合計 55.95m2(約17坪)

1階 55.95m2(約17坪)

■スケジュール 設計期間

 2014年5月~2014年6月

■工事期間

 2014年6月~2014年7月

■設計監理

 moon at.

■施工

マツシタ店装

伊月善彦_図面1 伊月善彦_図面2
HERBE DE MER 間取り

1 ENTRANCE

2 ステージ

3 棚

4 収納

5 接客スペース

6 作業台

7 バックカウンター

8 プレファブ冷蔵庫

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