建築家のリノベーション

» 2019/08/08/

内野輝明のリノベーション


建築家

内野輝明

住宅[ 名東郡・T邸]

嵯峨のいえ



佐那河内の自然に囲まれ、

これからも住み継いでいく「嵯峨のいえ」

吹き抜けに面する立派な梁はこの家の象徴。太目の杉のたて格子手すりとともに、室内を優しく力強く構成している。

吹き抜けに面する立派な梁はこの家の象徴。太目の杉のたて格子手すりとともに、室内を優しく力強く構成している。

 

内野さんの気さくな人柄に、安心して依頼

 『建てようネット』が開催するパネル展示会にご来場いただいたTさんご夫妻。「最初のうちは建築家と言ったら、オシャレでお金持ちな人がお願いするものだと思っていたんですが、パネル展で内野さんとお話してみたら、とても気さくな方で。この人なら、お金にそんなに余裕があるわけでもない“庶民”な私たちにも(笑)、設計してくださるんじゃないかと、心が楽になって。お話して、すぐにお願いすることに決めたんです」(奥様)。

 来場当時は新築を検討していたそうですが、予定地が農業振興地だったために断念。その時に案として出てきたのが、倉庫として使っていた離れをリフォーム&増築するというものでした。



「内野さんだったら、工夫して設計してくれるかな?」

 佐那河内村の山間にある敷地で道幅も狭く、重機の乗り入れも難しいのでは?と思われたTさんのお宅。また、母屋に住むご主人のご両親からは、長年倉庫として使っていた場所を住まいにするということに「本当にこんなところに住めるのか?」と不安の声が。しかし、奥様は「型にはまった考え方ではなく、内野さんだったら柔軟に、工夫して設計してくれるかな?と期待を込めて(笑)」お願いしたそう。

 その期待は現実のものに。「柱や梁、瓦屋根もしっかりしていましたし、傾いているわけでもない。既存のものを活かしつつ、ご夫婦の理想の住まい方を形にすることができるのではと思いました」(内野さん)。

財産とも言える風景に溶け込み、共生する住まいへ

 リフォームにあたってのご夫婦のオーダーは、何より「空間を広く使うこと」でした。構造がしっかりしていたため、設計の自由度は高かったのかもしれません。結果的には、内部は柱梁のみを残して全てが新しくなりました。

 玄関を入ってすぐ、廊下など共用スペースを設けずにLDKとすることで20畳超という広さを確保。階高が低かったため、天井をはずして2階の床梁をあらわしに。さらに南側には部分的に吹き抜けをつくることで窮屈な感じを解消。カラマツの床に座っていると、2階ではしゃぐ子どもたちの笑い声が聞こえてきて、いつでも家族の気配を感じられる“空間的なつながり”が実感できます。リビングの建物の南側の古くからの石垣も、設計の大きなポイントになりました。「この風景は、佐那河内の財産ですよね。お二人のご要望もあり、石垣がインテリアになるような窓を設置しました」(内野さん)。

 

建築家のリフォームによって、

次世代まで住み継いでいく家へ

 完成は2008年。それから6年経って、当時2人だったお子さんが4人に。二つのこども室、寝室、予備室をうまく使って楽しそうにお住まいです。奥様の要望でいたるところにつくっておいた収納が力を発揮しています。

 ご主人の祖父母が晩年を過ごした場所でもある離れは、建築家・内野さんの設計によって見事に生まれ変わりました。佐那河内の自然に囲まれ、これからも住み継がれていくでしょう。

Before

この倉庫部分がリフォーム後にはリビングの吹き抜けへと変貌。

この倉庫部分がリフォーム後にはリビングの吹き抜けへと変貌。

「本当に家族で住める家になるのか?」という疑問ももっともだが、建築家の手にかかれば問題なし。

「本当に家族で住める家になるのか?」という疑問ももっともだが、建築家の手にかかれば問題なし。



after

構造上抜くことのできない柱はそのままに。六年間の子どもたちの成長が刻まれて、家族にとってもなくてはならない存在に。

構造上抜くことのできない柱はそのままに。六年間の子どもたちの成長が刻まれて、家族にとってもなくてはならない存在に。

リビング脇の3畳の和室は、一段上げて、下に収納を設置。こちらも窓の外は石垣が。「あ、そこにカニがおる。雨の日はこないして、風流でええんですよ~」(奥様)。

リビング脇の3畳の和室は、一段上げて、下に収納を設置。こちらも窓の外は石垣が。「あ、そこにカニがおる。雨の日はこないして、風流でええんですよ~」(奥様)。

外壁を張り替え、開口部も全て新しくなって、外回りで唯一当時の面影を残すヒムロの柱。ちなみに、玄関引き戸の取っ手に使われた流木は「ウチの在庫からです(笑)」(内野さん)。

外壁を張り替え、開口部も全て新しくなって、外回りで唯一当時の面影を残すヒムロの柱。ちなみに、玄関引き戸の取っ手に使われた流木は「ウチの在庫からです(笑)」(内野さん)。

以前は隠れていた立派な梁をむき出しに。見た目の美しさと同時に、階高も確保している。ステンレス製のキッチン、キッチン脇には玄関に光を通しながら小物を並べるあみだ状の棚を設置するなど、施主の希望をかたちに。

以前は隠れていた立派な梁をむき出しに。見た目の美しさと同時に、階高も確保している。ステンレス製のキッチン、キッチン脇には玄関に光を通しながら小物を並べるあみだ状の棚を設置するなど、施主の希望をかたちに。

2階も小屋組みを大胆に見せる設計に。手すりや天井、床板に使用した杉の木の香りが満ちる、快適性の高い子ども部屋を実現した。

2階も小屋組みを大胆に見せる設計に。手すりや天井、床板に使用した杉の木の香りが満ちる、快適性の高い子ども部屋を実現した。

玄関の段差のデザインをはじめ、玄関引き戸のデザインにはイニシャル「T」をあしらうなど、内野さんならではの遊び心が満載。

玄関の段差のデザインをはじめ、玄関引き戸のデザインにはイニシャル「T」をあしらうなど、内野さんならではの遊び心が満載。

3つに見える建物の中央がリフォーム部分、左側が増築部分。南側にそびえる石垣も、有効にいかされている。

3つに見える建物の中央がリフォーム部分、左側が増築部分。南側にそびえる石垣も、有効にいかされている。



Tさんの夢を叶えた建築家

[建築家]

内野輝明

内野


設計コンセプト

「古くからの石垣と、青々と茂るすだちの木々の足元に、かつて隠居として建てられた離れをリフォーム+増築して新宅に。低い階高を一部吹き抜けにして広々と。代々受け継いでゆく、蛍の里嵯峨の暮らし」


設計のこだわり、苦労したところ

「母屋より威張らず、目立たず、でも中に入ればやわらかくあたたかい、そんな家を目指した。リフォームの常ですが、解体しないとわからない部分を、新井社長と色々協議しながら、補強方法などを検討しながらすすめていきました。」


建築データ

■家族構成

施主(39歳)、妻(39歳)、子供4人(11歳・10歳・6歳・5歳)

■構造・工法

 木造、在来工法

■延床面積

合計 124.2m2(約37.5坪)

1階 68.8m2(約20.8坪)

2階 55.4m2(約16.7坪)

■スケジュール 設計期間

 2007年11月~2008年5月

■工事期間

2008年6月~2008年11月

■設計監理

内野設計

■施工

新井建設

内野輝明_図面1内野輝明_図面2

T邸間取り

1 玄関

2 LDK

3 畳スペース

4 トイレ

5 洗面

6 寝室

7 こども室1

8 こども室2

9 洗面・脱衣所

10 風呂

11 洋室

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