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■徳島の建築家が考える木造建築
[店舗編 #002]

[バー]
店名/Bar 余白(よはく)
所在地/徳島県徳島市寺島本町東2-18-1
設計・監理/環境デザインワークス
施工/長田工務店
写真/米津 光


■ 「Bar余白」オーナーバーテンダーより
「余白」オーナーバーテンダー:有井さん
木で美と機能を両立
自信をもってお客様を迎えられる

バーは一日の終わりにくつろげる場所。だからこそ店舗設計にはこだわりがありました。ふんだんに木を使っているので香りが良く、それがお客様の癒しにつながっています。見た目に美しいだけでなく、木には声(音)の反響を抑える効果も。静かに会話ができて落ち着ける空間演出にも役立っています。
(オーナーバーテンダー:有井一茂 さん)


■「Bar余白」について
~建築家・清水裕且~

日本的空間であることがクライアントからの要望であった。

扉を開けてすぐに店内へ入るのではなく、茶室へ向かう露地に見立てたアプローチ空間を作り、時間的な間合い(余白)を持てるようにした。

このアプローチ空間は幅も高さも店内に向かうほど小さくし、身体的・視覚的にパースを効かせながら空間を絞った。

そうすることによって、茶室の躙口(にじりぐち)のように、店内(天井高が高く平面的に斜め方向に広げた)へ入った時には実際以上の空間の広がりを感じるであろう。

また、店内入口の引き戸は土壁下地の竹木舞でデザインし、アプローチからカウンター背面上部の木組が竹木舞から「見え隠れ」するようにし、建具を開けると一気に目に飛び込んでくるよう意図した。

カルチェラサータというイタリア磨き仕上げで表情をつけた円筒状の空間はトイレへのアプローチ演出として、吸い込まれるような奥性を生み、直線と曲線の「二元対比」を強調した。

材料は木、土、石などの自然素材を用いた。カウンター背面上部の木組やカウンターの一枚板、床材には杉材を用いた。

アプローチ空間には瓦土塀や、金屏風に見立てた壁がある。

何も描かない日本の金屏風に見立てた真鍮壁は「余白」を、そして経年変化で色がくすんでくることで「侘び・寂び」を表現した。

このように「余白」「見立て」「奥性」「二元対比」「侘び・寂び」など、日本文化の根幹を感じられるような空間を目指した。


■建築データ

敷地面積/—
延床面積/99.35平米(約30.1坪)
・規模/—
最高の高さ/—
軒高/—
地域地区/—
主体構造/—
基礎/—
屋根/—
外壁/—
建具/木製建具
内部仕上げ/ジョリパット
設計期間/2018年6月~2018年8月
工事期間/2018年8月~2019年8月


■建築家 紹介
建築家:清水裕且さん
清水裕且
Shimizu,Hiroaki

環境デザインワークス

所在地/徳島県徳島市助任橋1-24-1(WITHビル3階)
tel.088-624-8373

【所属】
日本建築家協会、日本建築学会、徳島県建築士事務所協会、徳島県建築士会

【プロフィール】
2001年 東京理科大学理工学部 土木工学科 卒業
その後、地元建設会社に勤務しながら独学で建築の世界へ
2009年 環境デザインワークス設立

【受賞歴】
第23回木材活用コンクール優秀賞
 一般社団法人日本インテリアプランナー協会賞(Bar余白)
日本空間デザイン賞2020 Short List(Bar余白)
第4回JIA四国建築賞 大賞 (小さな石場建ての家)

■木造建築への思い

今回の『Bar余白』もそうですが私の場合、店舗設計のほとんどが既存建物のインテリアデザインであり、建築からつくるということは滅多にありません。
なので「木造建築」というより「木のインテリア」への思いを述べます。

木をインテリアに使う理由として大きく5つに分けてみました。

まずは「触り」です。手触り、足触りがいいということです。

なぜいいかの説明はここでは省きますが、感覚的にわかっていただけるのではないでしょうか?

あと、目触りとして木には自然のテクスチャー(表情)があります。
木目など何一つ同じものはありませんし、光の反射も目に優しいです。

2つめは「香り」です。
香り成分には癒し効果や抗ウイルス効果などが認められています。

3つめは「加工性」です。

木は鉄やコンクリートなどと比較してフレキシブルに加工しやすいのでデザインの幅が広がります。

4つめは「情緒性」です。

木という素朴な材料には泥臭さみたいなものがあり、その中に人間の本質が潜んでいるように思います。
また、無垢材では物理的な強度の問題もあり、適度に柱や壁が必要になってきます。そのことで自然とヒューマンスケールな空間が構築されます。

5つめは「山とのつながり」です。

木を使うことによって治山治水やカーボンニュートラルといった背後にある地球環境にも貢献していこうというものです。

以上のような事を考えながら木をデザインしています。
(建築家 清水裕且)

■ 建築家とつくる、こだわりの注文住宅

「スキップフロアの家」

完成見学会 開催
2月19日(土)20(日)

建築家のアイデアがたくさん詰まった、オンリーワンの家の完成見学会を開催します!

1.設計コンセプト
2.こんな方におすすめの見学会です
3.「スキップフロアの家」フォトギャラリー
4.開催日時
5.場所
6.予約方法
7.お願い

設計コンセプト

玄関に入ると土間、ダイニング、リビング、寝室へと階段状にステップする広いワンルーム空間。いろんなところにいろんな居場所があり、どこにいても家族がつながる住宅です。

「スキップフロアの家」の設計者・開(はり)さんは、BIM(※)ソフトを使って3Dの立体モデルを構築します。「日差しの入り方」「外からどのように見えるか」「家の中から何が見えるか」など、家と敷地を取り巻く環境をコンピューター上でシミュレーションしているのです。
このように三次元モデルで設計することで、空間のつながりを立体的に“見える化”してくれるのも、大きな特徴です。

※Building Information Modeling(ビルディング インフォメーション モデリング)

【スキップフロアの家】
敷地面積/165.30平米(50坪)
床面積/128.54平米(39坪)
設計・監理/開(はり)達也 氏
[開建築設計事務所]
施工/株式会社 島出建築事務所
マッチング/建てようネット徳島

→WEB予約フォームはこちら

こんな方におすすめの見学会です

「どこにいても、家族と程よくつながる家がいい」と思っている方
「自分たちのこだわりが詰まった家を建てたい」と考えている方
「建築家って、敷居が高そう…」と思っている方
「外観も内装も全方位、おしゃれな家に住みたい」と考えている方
「家づくりのこと、そろそろ真剣に考えたい」という方

→WEB予約フォームはこちら

スキップフロアの家フォトギャラリー

開催日時

2022年2月19日(土曜)
2022年2月20日(日曜)
※両日とも午前10時~、最終受付は午後4時
※お一組につき約50分ずつ。

【事前予約制】ご予約の時間帯は完全貸し切りとなり、ほかの方と滞在時間が重なることはございません。

→WEB予約フォームはこちら

場所

徳島市論田町(徳島第一自動車教習所周辺)
※詳細はご予約が確定した方に直接お伝えします。

予約方法

このページのいちばん最後にあるWEB予約フォーム、またはお電話(088-654-1118)でご予約ください。


お願い

手指の消毒、検温、マスクの着用をお願いいたします。
お子さまとご一緒の場合は、抱っこまたは手をつないだままご見学ください。
これから家づくりを始める方を対象とした見学会です。
他社でご契約済み・建設中の方、同業者の方のお申し込みはご遠慮くださいますようお願いいたします。

  

■徳島の建築家が考える木造建築
[店舗編 #003]

[料理店(割烹)]
店名/阿波割烹 五十鈴(いすず)
所在地/徳島県徳島市秋田町1-67
設計・監理/有限会社 中川建築デザイン室
施工/株式会社 島出建築事務所
写真/米津 光


■ 「阿波割烹 五十鈴」女将より
「五十鈴」女将:仁木さん
木は可変性が高い素材だから
事業展開に柔軟に応えてくれる

照明を落としても、温かみのある雰囲気を保てるのが木の魅力。それに手直しが簡単で融通がきく点も優秀です。お客様のニーズに応じて増築した際も、既存の空間と自然につなげることができました。構造にも内装にも木を多用したので、店舗運営に必要な“変化”に柔軟に対応できたのだと思います。
(女将:仁木 祐佳 さん)


■「阿波割烹 五十鈴」について
~建築家・中川俊博より~

建築地は昔からの徳島の繁華街秋田町の中心地にある。

準防火地域の敷地は鉄筋コンクリート造、鉄骨造の雑居ビルが建ち並ぶ環境だが、施設の用途を考えると、木造で建てることが最適と考え、防火構造の木造平屋建てを提案した。

隣地周りの目に付きにくい外壁は、ガルバリウム鋼板張りとし、ファサードなどの目につきやすい外壁周りは防火構造の塗り壁仕上げとして、雰囲気を確保できるよう計画した。

変形敷地のため、各個室はパーティションで分けて、様々な利用客に対応できるよう間仕切られ、ウナギの寝床風に奥へ奥へと繋がるようなレイアウトとしている。

身の丈に合った小規模の運営でスタートしたが、運営の努力から人気店へと成長。増築が必要となり、2期工事として一部事務所を撤去し、奥に残る駐車場に2階建てを増築した。

増築した各客席は個室として利用するが、大人数の宴会時には、建具を引き込み大広間として、TPOに合わせ使えるように計画している。

増築部との取り合い廊下は、敷地形状の歪みがそのまま廊下に現れ、最初から計画した形にはない増築ならではの面白い雰囲気になっている。

さらに人気が高まって手狭になれば、第3弾の増築も可能だと施主に提案をしている。


■建築データ

敷地面積/419.05平米(約126.8坪)
延床面積/250.51平米(約76坪)/1期:145.13平米(約44坪)、2期:105.38平米(約32坪)
・規模/木造一部2階建て
最高の高さ/7.25m
軒高/6.3m
地域地区/商業地域、準防火地域
主体構造/木造在来工法
基礎/RCベタ基礎
屋根/ガルバリウム鋼板瓦棒葺き
外壁/ショップフロント周り、有機砂壁材荒壁仕上げ(防火構造)
・その他外壁/ガルバリウム鋼板折板張り(防火構造)
建具/延焼のおそれエリア外、内部、すべて県産杉木製建具
内部仕上げ/和紙クロス貼り
設計期間/1期:2015年1月~12月、2期:2017年1月~6月
工事期間/1期:2015年12月~2016年6月、2期:2017年6月~11月


■建築家 紹介
建築家:中川俊博さん
中川俊博
Nakagawa,Toshihiro

有限会社 中川建築デザイン室

所在地/徳島県徳島市国府町敷地311
tel.088-637-2311

【所属】
日本建築家協会、日本建築学会

【プロフィール・実績】
1977年 九州産業大学 芸術学部卒業
1987年 地元デザイン事務所から独立
1989年 プチリゾートホテル・モアナコースト(徳島/鳴門)
1991年 コートヴィレッジ桜ヶ丘(東京/多摩)
1993年 有限会社 中川建築デザイン室設立
1995~97年 しんまちボードウオーク(徳島)
1997年 こうべ甲南武庫の郷(神戸)
1998年 旧Tio高原ビル/現kokusaiビル(徳島)
1999年 しんまちアトリウムアーケード(徳島)
2001年 カフェ&レストラン カサブランカ(徳島)
2002年 ハウスウェディング ノビアノビオ(徳島)
2003年 複合商業施設 88ステージ(丸亀)
2004年 複合商業施設 West-West(大歩危)
2005年 那覇市西町再開発事業(沖縄)
2008年 徳島LEDアートフェスティバル提案、検討委員1
2009年 徳島県青少年センター 改修PFI事業(とくぎんトモニプラザ)
2010年 アグリカフェコモド(徳島)
2012年 七福タオル配送センター(今治)
2013年 阿波地美獲 あおき(勝浦町)
2017年 阿波割烹 五十鈴(秋田町)
2017年 れんまるカフェ(鳴門)
2019年 ルノー徳島ショールーム(石井)

【受賞歴】
第8回 ジャパンショップ・記念コンペティション・ホテル部門入賞
 プチリゾートホテル モアナコースト
第6回 建設省緑のデザイン賞 建設大臣賞
 しんまちボードウオーク両国橋公園
日本商環境設計家協会JCDデザイン賞97 複合施設部門 入選
 こうべ甲南武庫の郷
第7回 徳島市まちづくりデザイン賞 最優秀
第13回 国土交通省 手づくり郷土賞 入選
2003 国交省都市整備局 都市景観大賞
 しんまちボードウオーク整備事業
第8回 徳島市まちづくりデザイン賞 最優秀賞
 Tio高原ビル
2005 東京国際家具見本市アワード グランプリ受賞
 組立式家具ZIGZAG他
2013 徳島市まちづくりデザイン賞 緑とともに賞
 徳島青少年センター改修事業(とくぎんともにプラザ)
2017 LIXILフロントコンテスト2017 小規模施設部門受賞
 れんまるカフェ

■木造建築への思い

木造建築は徳島の気候風土にも調和し、快適性もS造、RC造よりも住み心地は優しい。また、用途に合わせた増改築も容易であり、対応性の高い建物として利便性は高い。

しかし、小規模な建物ではなく、中大規模の建物を木造でとなると、伝統工法や在来工法の枠を超え、集成材やCLT、LVLなどを使った新木造と呼ぶ部材や、工法が主流だ。

徳島にはそのような工場はなく、いざ使うとなれば県外のメーカーや材料に頼らざるを得ない。県産材にこだわって使おうとすれば、どうしても重ね梁、合わせ柱といった特殊な工法や、効率の低い利用になってしまう。

特殊な工法では県産材の利用できる機会は限られ、どうしても小規模施設中心の利用になるだろう。

また、徳島のような地方でもグローバル経済の中にあり、目の前の県産材よりも、はるか遠くからコンテナに乗ってくる外材が、安くきれいで使い易かったりする現状がある。

最新のCLTやLVLの工場とまで行かずとも、既に一般部材として多く利用されている集成材の工場が県内に共同ででも1つあれば、単純な経済効率優先の価値観に対して、地元の施設を地元の材料で建てる地産地消として、環境問題やCO2対策、地域経済の循環など、県産材の有効利用を介して可能性は大きく広がるのでは、と思う。
(建築家 中川俊博)

■徳島の建築家が考える木造建築
[店舗編 #004]

[結婚式場]
店名/樫野倶楽部 別邸『風雅庭』(ふうがてい)
所在地徳島県板野郡松茂町広島字北川向四ノ越29-1
設計・監理/株式会社 鳥羽知夫建築設計事務所
施工/株式会社 島出建築事務所
写真/米津 光


■ 「樫野倶楽部」支配人より
支配人:岡田さん
木は自然のおくりもの
あたたかな雰囲気は格別

新郎新婦の新しい感性と古民家の風情が合わさって、昔と今がつながる--。木の建物だからできることだと思います。ご宴席のテーブル設置ではデメリットと思われがちな古民家の柱も、逆にそれがいい。歴史を経た木の柱はいい表情なんです。日本人のDNAには日本家屋の良さがインプットされているのかもしれませんね。
(支配人:岡田 由美 さん)


■「樫野倶楽部 風雅庭」について
~建築家・鳥羽知夫より~

「樫野倶楽部」プロジェクトの舞台となった、旧施設「阿波の里」は、1993年、徳島を代表する和菓子メーカー社長の「土着の味覚文化を提供する憩いの場をつくりたい」という想いのもと、近代的な生産システムを備えた工場と「里山の風景」を融合させた複合施設として誕生したと聞いています。

この折りに、滋賀の古民家3棟が解体移築され、レストラン、茶屋、休憩所とそれぞれ新しい機能を与えられました。残念ながらオープン時の賑わいは、時の流れとともに陰りをみせ、2002年に閉館しました。

同じ年、ブライダル事業を総合的に手がける老舗貸衣装会社から、この施設を「結婚式場」として改装したいとの依頼を受けました。

しかし、「阿波の里」が機能を停止してからかなりの時間が経過しており、移築された古民家3棟は傷みが酷く、風情や趣きを感じられるような状態ではなかったことを記憶しています。

改装作業以上に困難だったのは「法的整理」、つまり新たな用途に合わせ、建築許可を取り直すことでした。

付帯設備の老朽化、広大な敷地全体で複合的に絡まる法基準・・・。当時、共に知恵を出し合い、協力していただいた行政の方々にはたいへん感謝しています。

「樫野倶楽部 本館」は、様々な困難や課題を乗り越え、2004年にオープン。県下指折りの人気ブライダルバンケットとして、活躍をはじめます。

「別邸 風雅庭」は、2期工事として2012年に竣工しました。江戸後期に創建された滋賀の武家屋敷(武田家)、「阿波の里」時代には茶屋として使われていた建物の増改築でした。

建物全体の耐震強度を増すことと合わせ、二方に下屋を増築することで「披露宴会場として最大120名収容」という条件をクリアしました。

解体途中は貧相な姿となり、若干、不安な気持ちにもなりましたが、現代の職人の手により新たな部材と融合し、新しい役目を与えられ「蘇生」してくれたように感じます。

工事中、永い時を経た木も、加工のためカンナを入れると、真新しい木肌を見せてくれたことに感動しました。

木は柔軟で強く、そして生き物であるということを強く感じさせてくれた改装でした。

そして2014年には、敷地内第3のパンケット「観月邸 梨宮」も完成。

3期にわたるリノベーションによって、複合施設としての「樫野倶楽部」が完成しました。

滋賀で暮らしていた当時の住人から見ると、今の使われ方は、どのように映っているでしょうか・・・。

もちろんその時代の面影はなく、変わり果てた姿に複雑な思いを抱くかも知れませんが、少なくとも、幸せの門出の場として使われていることは喜んでくれるのかな・・・と楽観的に想像したりもします。

「阿波の里」から「樫野倶楽部」へと、時の流れとともに名称も用途も変わりましたが、先人が残してくれた価値ある木造建築が、これからも多くの人と出会い、新たな歴史を刻んでいってくれることを切に願っています。


■建築データ

敷地面積/11802.67平米(約3570坪)
延床面積/268.58平米(約81.2坪)
・規模/—
最高の高さ/7.6m
軒高/5.5m
地域地区/市街化調整区域(用途指定なし)
主体構造/木造
基礎/既存基礎改修
屋根/ガルバリウム鋼板横葺+既存瓦
外壁/漆喰塗+既存仕上補修(土塗り壁+漆喰塗)
建具/杉框ガラス引戸
内部仕上げ/一部構造現し+新設天井(ビニルクロス)
設計期間/2011年10月~2012年3月
工事期間/2012年4月~6月


■建築家 紹介
建築家:鳥羽知夫さん
鳥羽知夫
Toba,Tomoo

株式会社 鳥羽知夫建築設計事務所

所在地/徳島県徳島市南新町1-25(天野ビル)
tel.088-655-5799

【所属】
日本建築家協会、徳島県建築士会

【プロフィール】
1986年 徳島県立城南高校卒業
1990年 近畿大学工学部建築学科卒業
1991~93年 小川晋一都市建築設計事務所勤務(広島)
1993~2002年 中川建築デザイン室勤務(徳島)
2002年 鳥羽知夫建築設計事務所設立
2006年 株式会社 鳥羽知夫建築設計事務所に改組

【受賞歴】
インテリア関連と住まいコンペ&コンテスト2003入賞(2003年)
第10回 徳島市街づくりデザイン賞「まちかどパーク賞」受賞(2004年)
第5回 徳島県まちづくり環境大賞「まちづくり造景部門 / 優秀賞」受賞(2004年)
JCD DESIGN AWARD 2007入選(2007年)
第15回 徳島市街づくりデザイン賞「路地中の優しさ賞」受賞(2018年)

■木造建築への思い

2年前に「もっけんフォーラム」(主催:とくしま木造建築学校)のリレーセミナーで「設計監理を『木』をテーマに振り返る」という、少々大げさなタイトルで話をさせていただきました。

学生時代から、就職、独立し現在に至るまで「木」との関わり、そして自分の仕事を振り返る意味でも貴重な機会でした。

生い立ちから振り返ってみても、木の恩恵を受けるような内外の生活環境ではなかったのですが、唯一、週に1度遊びに行く母の実家が、小さな木造の平屋(17坪)でした。

間取りは今でいう「店舗併用住宅」で、背広を仕立てる作業場からL型に繋がるように6畳が2間あり、その奥に水場(台所)、風呂はそこから外に出て積層ブロックで作られた小屋の中にありました。

そんな時から25年が経ち、独立してすぐ仕事もない頃に、初めて依頼をもらったのが、その母の実家の改装でした。

工事内容は、かなり高齢となった祖父が過ごしやすいよう手すりを付けたり、段差を解消したりということでした。

久しぶりに訪れ、ほんの少しだけ建築の知識がついた頭で改めて眺めてみると、驚くのはその「広さ」でした。

記憶にある当時のことを思い出してみると、玄関から客が来ると、土間と作業場の段差が相手に座っていただくのにちょうどいい高さで、お茶は「作業台」の上に出され商談をしていました。

母が子供の頃は5人(夫婦+子供3人)で暮らしてたそうですが、夜はきっと作業台が子供の勉強机になっていたのでしょう。

主な生活空間だった奥の6畳2間では、食事が終わると片付けて布団を敷き寝室に、奥の台所は食事のあと歯を磨く、といったように場を柔軟に兼用しながら使っていたことが想像されます。

現在、周りの景色はガラッと変わってしまってより小さく感じますが、母の弟が住み継いでいます。家が人と同じように歳(時間)を積み重ね、ずっと寄り添ってくれている優しさを感じます。

最近、間取りを考える時、この母の実家のことをよく思い出します。
(建築家 鳥羽知夫)

■徳島の建築家が考える木造建築
[店舗編 #005]

[洋菓子製造・販売]
店名/オゥ・ポワヴル
所在地徳島県板野郡北島町江尻字旭光3
設計・監理/新居建築研究所
施工/アズマ建設
写真/北田英治


■ 「オゥ・ポワヴル」オーナーシェフより
「オゥ・ポワヴル」オーナーシェフ:森さん
店は街の一部
良い景観づくりに貢献したい

山育ちだから、そもそも木がないと安心できないんです。それに“木が適切に使われることが山の保全につながる”という、環境に対する考え方や価値観を共有できる設計者と出会えたことも大きかった。建築もお菓子づくりも“文化”だと思うから、良い環境・景観づくりに貢献していきたいです。
(オーナーシェフ:森 保介 さん)


■「オゥ・ポワヴル」について
~建築家・新居照和&ヴァサンティより~

◆木陰の下に広がる地域の店舗空間
高度成長期に徳島の工業地帯となり、現在では数少ない人口が増える町の新興住宅街に計画した洋菓子製造販売店である。

街路沿いはフランチャイズ化した看板チェーン店舗が並ぶ。こうした状況に対し、地域素材の魅力や町に貢献できる緑の環境空間を育むことを意識する。

建築主は、緑の中で作り手と客の目線が通い合い、自然、人、お菓子が交わる場を望まれた。

地域特産の新鮮素材を使ったお菓子がどのようにつくられるのか、香りを楽しみながら、子供からお年寄りまでコミュニケーションが生まれる店舗空間を目指す。

地場杉材の平角柱が連続する架構で、ブティック(販売)部門、アトリエ(製造工房)部門とそのサービス空間、緊張をほぐす従業員空間をつくる。

木造軸組みを保護し、木材の調湿効果などを発揮させるために屋根、壁、床下の通気性をもたせる。

高い二つのヴォリューム棟に1.6mの軒を廻す。軒先空間の2階南・西面には従業員のためのテラスを設け、東・北面は広場を囲む。従業員空間の廊下軸に、パティシエの作品が展示できるギャラリーを設ける。

木造フレームで囲んだ正方形の広場の中心に、大空へと伸びる樹高9mのシマトネリコの樹を四本植える。地元吉野川水系の砂利を敷き詰めた広場に落ちる木漏れ日は、夏はすがすがしい風を生み、春と秋は木々の間から陽光が差し込む。

街路樹のヤマモモと敷地の樹木が引き立てあうような植栽配置をし、緑の歩道空間が広がるようにする。

樹木の成長に伴って冬は風をさえぎり、少ない町の緑に潤いを与える。植物は四季を通じて表情が変わる。建築の環境形成の中心性を、建物でなく樹木に据える。


■建築データ

敷地面積/1946.12平米(約588.8坪)
延床面積/463.91平米(約140.3坪)
・規模/地上2階
最高の高さ/7.54m
軒高/6.97m
地域地区/第一種住居地域、第一種中高層住居専用地域
主体構造/木造軸組工法
基礎/鉄筋コンクリート造
屋根/カラーガルバリウム鋼板立平葺き
外壁/モエンサイディング、スタッコ吹付仕上げ
建具/木製建具、アルミ製サッシ
内部仕上げ/[床]ナラ床材、長尺塩ビシート [壁・天井]木造現し、ビニルクロス
設計期間/2006年10月~2009年11月
工事期間/2009年11月~2010年6月


■建築家 紹介
建築家:新居照和&ヴァサンティさん
新居照和&ヴァサンティ
Nii Terukazu & Vasanti

新居建築研究所

所在地/徳島県徳島市国府町中246-4
tel.088-642-7257

【所属】
日本建築家協会、日本建築学会、日本建築士会、日本建築協会、
アジア建築家評議会グリーン・サステナブル建築委員会

【新居照和/プロフィール】
1979年 関西大学大学院建築学修了
1979年 インド留学、B.V.ドーシ研究所
1986年 CEPT大学院美術科修了
1987年 末吉栄三計画研究室
1991年 新居建築研究所設立

【ヴァサンティ メノン 新居/プロフィール】
1980年 ムンバイ大学建築学卒業
1980年 B.V.ドーシ建築事務所
1985年 CEPT大学院都市・地域計画学修了
1987年 末吉栄三計画研究室
1991年 新居建築研究所設立

【受賞歴】
2012年 日本建築学会作品選集
2012年 日本建築家協会環境建築賞
2013年 徳島県木造住宅推進協議会長賞
2016年 ARCASIAアジア建築家評議会建築賞 住宅部門
2014年、2016年、2018年 JIA四国建築賞

■木造建築への思い

◆地域木材で魅力的な空間を
建築主には著名なお菓子づくり工房にいた修業時代からの想いがあった。

大都市の地階に工房があったため、早朝から夜まで太陽を見ない日々であった。太陽、緑や風、四季の移ろいを感じることが、いかに働く環境に大切か自覚されていた。

緑を感じる空間の中でお菓子を作り、お客さんとお菓子を介して、感受性が働くコミュニケーションをする。土地のこだわった農産物でお菓子を作る。

どこから見てもいい衛生環境にすることはもちろん、従業員のストレスを軽減すると同時に研鑽し合える場にする。

こうしたオーナーシェフの想いに建築空間で応えようとした。

訪れる誰もが大樹の心地よい木漏れ日を味わえる空間をイメージした。地域の木材と緑を活かした空間を介して、人と自然の豊かな関係を表現し、五感が働く場所にする。

大きな木材で架構を組み、自然の恵みを感じる空間を目指した。建築主と設計者、続いて施工者が参加し、設備機械業者や庭師の応援を得、力を合わせて、様々な現実を乗り越え、実現させていただいた。

徳島の風土で育った木材や石材などの建築素材を可能な限り使い、徳島でつくることを意識する。

地域の自然、社会の循環が大切だと考えると同時に、地域の風景につなげる。

現状況では地域のポテンシャルを見いだし、風景をつくる設計が大切だと考えた。

木材の素材が持つ力強さを生かす建築空間は、樹木の第二の生命を生かすと言える。

木の繊維特質と暖かさ、木の成分が作る香りや癒し効果、調湿性、経年変化の美が伴う。人に愛され、長寿であることが気候変動抑制の二酸化炭素固定化につながる。

大きな梁間に対して、10mを超える梁にはダブルガーダーの集成材を使ったが、地場の製材品や無垢板を徹底的に使う。

広場の領域をつくる10mを超える外部の梁は、金物を使わない伝統の継手で繋いだ。

長寿にするために湿気をこもらさない様々な対策を行う。木造はおおらかな空気環境を作るのだが、製造部門は部門別に一年中一定の4種類の厳しい温度・湿度コントロールが要求され、工夫と挑戦が求められた。
(建築家 新居 照和&ヴァサンティ)

■徳島の建築家が考える木造建築
[施設編 #001]

[宿泊施設]
施設名/晴耕(せいこう)雨読(うどく)
所在地[晴耕]徳島県三好市東祖谷落合114
[雨読]徳島県三好市東祖谷落合140
設計・監理/空間計画研究所
施工/[晴耕]中平建工、[雨読]昇住建
宿泊に関する問い合わせ/桃源郷祖谷の山里


■「晴耕・雨読」について
~建築家・喜多順三より~

この建物は三好市東祖谷山村落合重要伝統的建造物群保存地区の中腹に位置する。主屋と隠居屋、小さな小屋が石垣で造成された細長い敷地に一列に並ぶ、この地方の典型的な屋敷構えを有する民家である。

空き家となっていたものを三好市が借り受け、リノベーションを行い、主屋を「晴耕」、隠居屋を「雨読」と名付け、宿泊施設として活用している。

リノベーションにあたっては、2棟とも伝建地区内の特定物件であるため、外観は保存計画に基づいた復原を行い、内部は祖谷の民家の特性を生かしながら、宿泊施設にふさわしい快適性を確保することが求められた。

主屋、隠居屋ともに茅葺きの屋根を組みかえて、勾配の緩いトタン葺きの屋根にする「小屋下げ」や一部に増築が行われていたため、外観は当初から大きく変わっていた。

そこで小屋組や外壁の痕跡調査を行い、屋根は茅葺きに、外壁は土壁の上にこの地方独特の仕上げである真竹を熨した「ヒシャギ竹」張りであったことが判明し、当初の形態、仕上げに復原している。

内部は空き家が永かったためか、生活様式の変化に伴う改変は少なかった。祖谷地方の民家の空間特性を損なわないよう、既存の間取りや当初の設えを生かしながら、宿泊施設に求められる機能を配置している。

隠居屋には浴室を設けるスペースがなかったため、南側の小屋の形態をそのままに、浴室棟として新築している。

冬季の寒さ対策としては、外壁や床下には断熱材を施し、外部建具は雨戸+ペアガラス入りの框戸+障子と三重にするなど、機密性と断熱性を高めた上、床暖房を施した。

耐震性能は限界耐力計算により確認、いずれも限界変形角は1/20rad(ラジアン)以上を確保している。


■建築データ

敷地面積/—
延床面積/晴耕:82.60平米(約25坪)、雨読:64.76平米(約19.6坪*浴室等を含む)
最高の高さ/晴耕:7.92m、雨読:6.56m
軒高/晴耕:3.83m、雨読:2.73m
地域地区/—
主体構造/木造
基礎/玉石基礎
屋根/茅葺き
外壁/土塗壁の上ヒシャギ竹張り
建具/木製建具
内部仕上げ/珪藻土塗
設計期間/2010年10月~2011年7月
工事期間/2011年9月~2012年3月


■建築家 紹介
建築家:喜多順三さん
喜多順三
Kita,Junzo

空間計画研究所

所在地/徳島県徳島市安宅1-5-11
tel.088-652-7887

【所属】
日本建築家協会、日本建築学会、徳島県建築士会

【プロフィール】
1979年 東京工業大学建築学科卒業
1981年 東京工業大学大学院 社会開発工学専攻修了
1981~99年 JA設計
1999年 空間計画研究所設立

■木造建築への思い

三好市東祖谷落合集落や海部郡牟岐町出羽島の民家の保存修理に関わることが多いため、伝統工法で建てられた木造建築に触れる機会に恵まれている。

これらの建築物は、その土地で入手可能な木材や土、石、植物などの材料が多用され、取り壊されることがあっても、柱材や梁材、壁土などは再利用される循環型の仕組みを持っていた。

さらに、微地形を利用した災害の備えや、気候風土に応じた構法や様々なディテールなど、建築の持続可能性を考えるうえで学ぶべき点がとても多いと思う。

また、木造建築、特に伝統工法の場合、修理の容易性を特徴として挙げることができる。

様々な仕口や継手を用いることで、柱の交換や根継ぎ、梁の架け替えなどができ、建築物の長寿命化を図ることも可能だ。

しかし、こうした伝統的な建築技術の継承が困難な状況に直面している。

様々な技術や工法が開発され、新しい木造建築が生まれることは重要なことと歓迎しているが、大工や左官、石工、屋根葺きなどの伝統技術や木材を供給する林業の持続可能性も重要であり、このことに少しでも貢献できればと思っている。
(建築家 喜多順三)

■徳島の建築家が考える木造建築
[施設編 #002]

[休憩所]
施設名/(株)日新四国工場 社員休憩所
所在地徳島県小松島市横須町5-38
設計・監理/島津臣志建築設計事務所
企画/株式会社ヒトカラメディア
施工/株式会社 坂本工務店
写真/米津 光


■「日新四国工場 社員休憩所」について
~建築家・島津臣志より~

木造建築には欠かせない合板を製造している『株式会社日新四国工場』の社員休憩所の建て替え計画。築50年を超える鉄骨平屋の休憩所が老朽化していたのを機に、24時間稼動の工場で働く従業員が質の良い時間を過ごせるような休憩所をつくりたいと設計の依頼があった。

無機質なスレート葺き鉄骨造の工場が建ち並ぶ中に、徳島すぎを使った居心地のいい木造建築をつくることとした。

また、古い休憩所では、広いワンルーム空間に従業員が入れ替わり立ち替わり様々な過ごし方をしていた。食事をしたり、テレビを見たり、ソファで休んだり、談笑したり――。

自由で混沌とした使い方を踏襲しながらも、めいめいの休憩時間をより快適に過ごせることを念頭に置き、クライアントからの要望を整理した結果、大きさと性格の違う3つの休憩室を配置することとした。

100人参加の全体会議をする一番大きな休憩室は、8間×6間を無柱空間とするために杉材のトラス梁を用いた構造現しの空間とした。

その他には個室ブースを備えた部屋、畳小上がりのある部屋がある。

これら3つの休憩室をそれぞれ独立させるために、T型の半屋外通路を設けたが、これにより、工場、事務所、駐車場の3方向からの動線処理も解決した。

また、この通路には、桜を目の前にできるベンチを設けており、4つ目の居場所をつくることができた。

ルーティーンになりがちな毎日において、その日の気分によって過ごす場所を選び、リフレッシュして仕事に取り組んでもらえたらと願っている。


■建築データ

敷地面積/59,6004平米(約180291.2坪)
延床面積/462.83平米(約140坪)
規模/地上2階
最高の高さ/7.8m
軒高/7.43m
地域地区/工業地域
主体構造/木造
基礎/布基礎
屋根/ガルバリウム鋼板タテハゼ葺き
外壁/ジョリパット左官仕上げ
建具/スチールドア、アルミサッシ
内部仕上げ/[床]モルタルコテ押え、ビニルフロアタイル、和紙畳
[壁]ビニルクロス
[天井]構造材現し、ビニルクロス
設計期間/2018年4月~8月
工事期間/2018年9月~2019年3月


■建築家 紹介
建築家:島津臣志さん
島津臣志
Shimazu,Takashi

島津臣志建築設計事務所

所在地/徳島県名東郡佐那河内村下字中津5-7
tel.088-602-7730

【所属】
日本建築家協会、徳島県建築士会

【プロフィール】
2000年 専門学校穴吹カレッジ 建築デザインコース卒業
2002年~2010年 建築設計事務所 蔵
2010年~2014年 有限会社 内野設計
2012年 島津臣志建築設計事務所設立

【受賞歴】
2020年 第33回日経ニューオフィス賞 四国ニューオフィス推進賞
(株)日新四国工場社員休憩所

■木造建築への思い

店舗や施設の設計において、求められる用途、規模、コスト、法規等を考慮して、合理的に木造にたどり着くこともあれば、人がくつろぐ場所だから木に囲まれた居心地のいい空間にしたいという情緒的なやり取りを経てたどり着くこともある。

前者と後者を行ったり来たりしながら、設計がある程度進んだときには、すでにどちらが出発点だったかわからなくなっていることも多い。

自分自身はこれまで、後者の想いが強く、木造を建てることを考えてきた。

現在、進行中のプロジェクトに建築で使用する製材を、県内の山から切って、乾燥させ、製材にするまでの一連の流れに関わろうとしているものがある。

これまでの自分の仕事においては、現場で合流するまであまり意識していなかった流れである。こっち側とあっち側のふたつの流れを気にかけながら進めている。

自然の中で生きている木を扱う以上、こちらの思い通りにいかないことがあると頭では理解していたが、伐採時期など想像以上に山側と建築側の細やかな調整が必要なことがあるのを知った。

これまで、林業や山のことを学ぼうと、山に入って話を聞いてきて、少しずつ理解しはじめていたが、このプロジェクトによってさらに山のことが見えてきた今、建築家として、山とまちをつなぎ、人の営みを支える木造建築をつくることで、建築家として次の世代へより良い風景を残すことに寄与したいと考えている。
(建築家 島津臣志)

■徳島の建築家が考える木造建築
[施設編 #003]

[木材倉庫]
施設名/マツシマ林工株式会社 木造倉庫
所在地徳島県徳島市津田海岸町3-28
設計studioKEN
監理/マツシマ二級建築士事務所
施工/丸浦工業株式会社


■「マツシマ林工株式会社 木造倉庫」について
~建築家・真鍋憲資より~

近年では木造建築物の大規模化が進められている。木造といえば住宅規模であればなじみもあるが、ある時期から大型建築物や特殊建築物に木造が選ばれなくなって長い月日が流れた。

しかし、林業の衰退による山の荒廃やCO2削減が叫ばれる今日において、建築物の木造化は環境を守るという重要な行為と考えられる。

そんな中で、木造建築のプレカット加工を担うマツシマ林工株式会社が機械加工での大規模木造トラスの研究開発を進めている。プレカットマシーンで扱える材径で施設として利用できる大空間を確保する建築の開発である。

この物件はその第一号となる。スパン間を20m飛ばし大空間を確保、約1000平米の大空間を実現することができる。大規模木造の可能性として大きな期待がかかる。

なお、愛媛県にも約700平米の木造トラス建築ができている。プレカット化することにより汎用性のある建築構造を提供できるといえるだろう。


■建築データ

敷地面積/2357.74平米(約713.2坪)
延床面積/999平米(約302.197坪)
規模/木造平屋
最高の高さ/10.09m
軒高/8.39m
地域地区/工業専用区域
主体構造/木造トラス
基礎/鉄筋コンクリート造布基礎
屋根/ガルバリウム鋼板葺き
外壁/ガルバリウム鋼板、防火サイディング、ウッドサイディング
建具/アルミサッシ
内部仕上げ/なし
設計期間/2014年3月~9月
工事期間/2014年9月~2015年2月


■建築家 紹介
建築家:真鍋憲資さん
真鍋憲資
Manabe,Kenji

studioKEN

所在地/徳島県徳島市元町2-14(新町橋ビル3階)
tel.088-635-4272

【所属】
日本建築家協会、徳島県建築士会

【プロフィール】
1985年 徳島市立八万小学校卒業
1988年 徳島市立八万中学校卒業
1990年 徳島県立徳島工業高等学校機械科中退
1995年 株式会社山田組
1997年 自営業
2003年 株式会社リスコ
2006年 株式会社住スタイル研究所
2008年 studioKEN設立

【受賞歴】
2014 年 徳島県木の家コンクールリフォーム部門 県知事賞
2018年 第15回徳島市「街づくりデザイン賞」 リバーサイド物語賞

■木造建築への思い

古くから日本の建築の多くは木造で作られてきた。国土の7割近くが森林である、気候風土や災害の多発する日本では、木造という工法が適していたのであろう。

さらに、自然豊かな徳島県では海や山と触れ合う機会も多く、自然を愛する人も多い。木(木造)への愛着を強く感じる人も多いと思うことがよくある。

木造住宅を建てるとなると大工さんや工務店のようなそれなりのスキルが必要になるが、ちょっとがんばれば素人でも木で棚を作ったり、ちょっとした家具を作ったりできる。それだけ身近で親しみのある素材なのであろう。

これまでは、大規模建築や公共建築では木材は内装材などに限定された使われ方になっていたが、法整備や技術開発により様々な用途や規模で木造化できるようになってきた。

建物を木造化することによってこれまでよりも愛着と親しみのもてる施設が増えていくと期待している。
(建築家 真鍋憲資)

■徳島の建築家が考える木造建築
[施設編 #004]

[クラブハウス(事務所)]
施設名/徳島ヴォルティス クラブハウス
所在地徳島県板野郡板野町犬伏瓢谷2-22(徳島スポーツビレッジ内)
設計・監理/有限会社 内野設計
施工/株式会社 亀井組


■「徳島ヴォルティス クラブハウス」について
~建築家・内野輝明より~

3.11以降、徳島で何ができるかを考えてきた。
まず「仮設住宅試行」を構造材と板壁のみで建ち上がる板倉構法でつくった。板材の産地徳島での常に乾燥させながら積んでおく備蓄の仕組みが、福島の仮設住宅への迅速な材料供給を可能にしたと聞いていたからである。

続く「先行高地移転試行」では既存の峠道に沿って連なる細長い建築群をつくった。東南海・南海地震が起これば、復興の動きから取り残されるであろう徳島県南部の漁村でのこのプロジェクトでは、当初から木材備蓄の可能性に着目した。

柱材だけで建築ができれば重機は不要。柱材だけ備蓄すればよく、さまざまな寸法の部材を必要とする従来の在来軸組構法に比べて備蓄は格段に容易になる。備蓄する期間で天然乾燥材ができるとなれば、「日常の林業の振興策が非常時の仮設住宅の供給をスムーズにする」ことにつながる。

現場では、上部木造部分の持ち出しを、一期の方杖から、二期では柱材を交互に積み重ねる重ね梁構法として工期をぐっと短縮できた。

「徳島県応急仮設住宅」と「木材備蓄倉庫」では重ね梁で屋根をつくり、土台から屋根まで完全に柱材のみによる建築ができた。
さらに中規模木造建築を柱材だけで建てられたら、備蓄の輪はより大きく広がる。多くの柱材が備蓄倉庫にあれば、避難生活を支える応急仮設住宅のみならず、復興期のさまざまな施設の建設に回すこともできる。

これまでの取り組みは規模を問わずすべて平屋であったが、このクラブハウスは2階建て、延床面積約1,000平米。2021年春に過去最大の四寸角の純柱材建築として竣工を迎えた。


■建築データ

敷地面積/64,169.03平米(約19411坪)
延床面積/993.02平米(約300坪)
規模/木造2階建て
最高の高さ/10.03m
軒高/8.04m
地域地区/—
主体構造/木造
基礎/鉄筋コンクリート基礎
屋根/ガルバリウム鋼板タテハゼ葺き
外壁/ガルバリウム鋼板タテハゼ葺き、一部杉板張り
建具/鋼製建具、木製建具
内部仕上げ/杉構造材現し、杉板、構造用合板
設計期間/2019年9月~2020年8月
工事期間/2020年8月~2021年3月


■建築家 紹介
建築家:内野輝明さん
内野輝明
Uchino,Teruaki

有限会社 内野設計

所在地/徳島県徳島市万代町5-71
tel.088-626-9567

【所属】
日本建築家協会、日本建築学会、徳島県建築士事務所協会、
徳島県建築士会、木質構造研究会、木の建築フォラム

【プロフィール】
1986年 大阪工業大学卒業
1986~90年 山本西原建築設計事務所
1990~91年 海外視察
1991~92年 埴淵建築設計室
1992~99年 髙﨑正治都市建築設計事務所
1999年 内野輝明建築設計事務所設立
2005年 有限会社 内野設計に改組

【受賞歴】
第29回INAXデザインコンテスト金賞
日本建築士会連合会第8回まちづくり大賞
2016年日事連建築賞「奨励賞」
awaもくよんプロジェクト最優秀賞

■木造建築への思い

現場に行ってワクワクするのはなんといっても木造です。林の中にいるかのようにすがすがしい気分になります。杉材にふんだんに含まれるフィトンチッドのせいか、そもそもいい香りがして何とも言えず癒されます。

10年ほど前に木造建築についてみんなで学べる場をつくろうと始まったとくしま木造建築学校で、山の人、製材の人、木製品を作る人、研究者、先生、木造好きな設計者や工務店の方などいろいろな立場の方と知り合いになり、教えてもらい、みんなの知恵がつながって木造建築ができあがっていくことを知りました。

現場で、大工さん、建具屋さんや家具屋さんら木工職人のみなさんの技を見せてもらったり、みんなや監督さんと一緒に納まりを考えたりする時間は本当に楽しい。

伐採ツアーに参加して林に入って杉に楔を打ち込んで、倒れるときの大きな音を聞き、年輪を数え、またその山々をはなれた所から見渡してみると、何十年というサイクルで人の手が入った自然の大きな循環の一部が建築になっているんだなあと実感します。

今、80年生を超えるような大木が売れません。
それをどのように建築化していくのかを考えるのは我々建築家の使命だと思います。

木造建築には伝統構法、在来軸組構法、枠組壁構法他、さまざまなやり方がありますが、これと決めつけずに、山の状況を知る人たちとともに考えていく必要があります。

例えばこの10年間に建てられるべき木造建築は、次の10年では変わっているかもしれない。

みんなでやわらか~く考えて、いろいろな木造建築を建てて、徳島をもっと木造化していきましょう。
(建築家 内野輝明)

「家づくりにまつわる税金のお話」
~制度を知って、賢く利用するには?~

参加は無料

家づくりと「お金」の話は切っても切れない関係です。
夢や希望を理想のカタチで実現するために資金をどう使うのか。
これはとても重要なテーマなのです。
そこで今回は、意外と見落とされがちな「家づくりにまつわる税金」にテーマを絞って、プロに解説していただきます。
絶対に避けては通れないテーマなので、この機会にしっかりと理解しておきましょう!

おもな内容

■新築時の税金
マイホームを建てるときにかかる税金のことを知ろう

■固定資産税
毎年かかる固定資産税を安くする方法は?

■住宅ローン控除
住宅ローン控除を受けるために必要な手続きは?

■住宅取得等資金の贈与
両親・祖父母にもメリットあり! 住宅取得資金の贈与

開催日時

2021年10月9日(土)午前10時~

開催場所

あわわビル会議室(徳島市南末広町2-95)
※無料駐車場あり。
※密を避けるため、参加人数に応じて会場変更の場合あり。

お申し込み・お問い合わせ

このページの最後にあるWEB予約フォーム、またはお電話(088-654-1118)で受け付けております。
※家づくり計画を具体的にこれから始める方が対象です。
※他社でご契約済みの方は参加をご遠慮くださいますようお願いいたします。


講師
小島晴美 氏

税理士法人アクシス 税理士。
【税理士法人アクシス】
https://m-staff.com
■本社
徳島市北島田町1-3-3
■高松支店
高松市松縄町1050-27

会社の会計はもちろん、個人の節税対策や相続対策など多数の専門家が在籍。だからアクシスグループでは、ワンストップの提案が可能となっている。

■大賞受賞「小さな石場建ての家」

建てようネット[徳島]登録建築家でもある清水裕且さん[環境デザインワークス]がこの度、
第4回JIA四国建築賞2020において大賞を受賞されました!!

これを記念して受賞作品「小さな石場建ての家」の見学会を開催します。

葉枯らし乾燥(自然乾燥)させた徳島のスギを使い、
伝統構法で建てられたこの家には、
自然素材の生産・加工・流通にかかわる人たち、
設計・建築に携わる人たちの熱き想いが詰まっています。

建築に興味のある方はもちろん、
そうでない方にもぜひご覧いただきたいです。

「自然素材を使った家ってどんな感じ?」

「水害や地震に備える家づくりって?」
という方もぜひお越しくださいね。

開催日時

2021年 1月23日(土曜)
2021年 1月24日(日曜)
※両日とも午前10時~、最終受付は午後3時30分。
※お一組につき30分ずつ。

【事前予約制】ご予約の時間帯は完全貸し切りとなり、ほかの方と滞在時間が重なることはございません。

場所

徳島市大原町(論田小学校周辺)
※詳細はご予約が確定した方に直接お伝えします。

予約方法

このページ最後にあるWEB予約フォーム、またはお電話(088-654-1118)でご予約ください。

第4回JIA四国建築賞2020
大賞「小さな石場建ての家」
設計監理:清水 裕且[環境デザインワークス]


設計コンセプト

大切に住み継いで「未来の古民家」となるよう「古美(ふるび)る)」自然素材で構成した石場建ての家である【※1】

大工の手刻み【※2】による木の架構が内部空間に秩序と安心感を与えてくれる。

地面から1.5メートル上げた高床は湿度、水害対策だけでなく、敷地状況にあった景を得る。

コンパクトでも窮屈さを感じさせないように、水廻りをコアにした行き止まりのない回遊性プランとし、玄関から奥に進むにつれプライバシー度を高め、小さな住宅でも「真・行・草」と空間が「奥ゆかし」く移ろうことを意識した。

【※1】石場建て(いしばだて)
お寺や神社、古民家などに見られる伝統構法の一つ。

建物と土台を敢えてつなげず、石の上に柱をのせているだけの造り。
大規模地震の際は、石と柱がずれることによって、建物に加わる力を減衰させる。
また、経年変化にともなうメンテナンスの容易性も特長と言える。

【※2】手刻み(てきざみ)
木の特性を見極めて、一つひとつの材料に墨で線を引いたり印をつけたりしながら、手作業で加工を行うこと。

■日本建築家協会(JIA=The Japan Institute of Architects)は、
建築の設計監理を行う建築家の団体として、1987年に結成されました。

建てようネット[徳島]の公式ホームページをリニューアルしました!
施工実例はこれから、どんどん追加していきます。
ご期待ください!