■徳島の建築家が考える木造建築
[店舗編 #002]
[バー]
店名/Bar 余白(よはく)
所在地/徳島県徳島市寺島本町東2-18-1
設計・監理/環境デザインワークス
施工/長田工務店
写真/米津 光
■ 「Bar余白」オーナーバーテンダーより
木で美と機能を両立
自信をもってお客様を迎えられる
バーは一日の終わりにくつろげる場所。だからこそ店舗設計にはこだわりがありました。ふんだんに木を使っているので香りが良く、それがお客様の癒しにつながっています。見た目に美しいだけでなく、木には声(音)の反響を抑える効果も。静かに会話ができて落ち着ける空間演出にも役立っています。
(オーナーバーテンダー:有井一茂 さん)
■「Bar余白」について
~建築家・清水裕且~
日本的空間であることがクライアントからの要望であった。
扉を開けてすぐに店内へ入るのではなく、茶室へ向かう露地に見立てたアプローチ空間を作り、時間的な間合い(余白)を持てるようにした。
このアプローチ空間は幅も高さも店内に向かうほど小さくし、身体的・視覚的にパースを効かせながら空間を絞った。
そうすることによって、茶室の躙口(にじりぐち)のように、店内(天井高が高く平面的に斜め方向に広げた)へ入った時には実際以上の空間の広がりを感じるであろう。
また、店内入口の引き戸は土壁下地の竹木舞でデザインし、アプローチからカウンター背面上部の木組が竹木舞から「見え隠れ」するようにし、建具を開けると一気に目に飛び込んでくるよう意図した。
カルチェラサータというイタリア磨き仕上げで表情をつけた円筒状の空間はトイレへのアプローチ演出として、吸い込まれるような奥性を生み、直線と曲線の「二元対比」を強調した。
材料は木、土、石などの自然素材を用いた。カウンター背面上部の木組やカウンターの一枚板、床材には杉材を用いた。
アプローチ空間には瓦土塀や、金屏風に見立てた壁がある。
何も描かない日本の金屏風に見立てた真鍮壁は「余白」を、そして経年変化で色がくすんでくることで「侘び・寂び」を表現した。
このように「余白」「見立て」「奥性」「二元対比」「侘び・寂び」など、日本文化の根幹を感じられるような空間を目指した。
■建築データ
・敷地面積/—
・延床面積/99.35平米(約30.1坪)
・規模/—
・最高の高さ/—
・軒高/—
・地域地区/—
・主体構造/—
・基礎/—
・屋根/—
・外壁/—
・建具/木製建具
・内部仕上げ/ジョリパット
・設計期間/2018年6月~2018年8月
・工事期間/2018年8月~2019年8月
■建築家 紹介
清水裕且
Shimizu,Hiroaki
環境デザインワークス
所在地/徳島県徳島市助任橋1-24-1(WITHビル3階)
tel.088-624-8373
【所属】
日本建築家協会、日本建築学会、徳島県建築士事務所協会、徳島県建築士会
【プロフィール】
2001年 東京理科大学理工学部 土木工学科 卒業
その後、地元建設会社に勤務しながら独学で建築の世界へ
2009年 環境デザインワークス設立
【受賞歴】
・第23回木材活用コンクール優秀賞
一般社団法人日本インテリアプランナー協会賞(Bar余白)
・日本空間デザイン賞2020 Short List(Bar余白)
・第4回JIA四国建築賞 大賞 (小さな石場建ての家)
■木造建築への思い
今回の『Bar余白』もそうですが私の場合、店舗設計のほとんどが既存建物のインテリアデザインであり、建築からつくるということは滅多にありません。
なので「木造建築」というより「木のインテリア」への思いを述べます。
木をインテリアに使う理由として大きく5つに分けてみました。
まずは「触り」です。手触り、足触りがいいということです。
なぜいいかの説明はここでは省きますが、感覚的にわかっていただけるのではないでしょうか?
あと、目触りとして木には自然のテクスチャー(表情)があります。
木目など何一つ同じものはありませんし、光の反射も目に優しいです。
2つめは「香り」です。
香り成分には癒し効果や抗ウイルス効果などが認められています。
3つめは「加工性」です。
木は鉄やコンクリートなどと比較してフレキシブルに加工しやすいのでデザインの幅が広がります。
4つめは「情緒性」です。
木という素朴な材料には泥臭さみたいなものがあり、その中に人間の本質が潜んでいるように思います。
また、無垢材では物理的な強度の問題もあり、適度に柱や壁が必要になってきます。そのことで自然とヒューマンスケールな空間が構築されます。
5つめは「山とのつながり」です。
木を使うことによって治山治水やカーボンニュートラルといった背後にある地球環境にも貢献していこうというものです。
以上のような事を考えながら木をデザインしています。
(建築家 清水裕且)