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前山に応える大屋根の家 #170

その場所にしかない価値が、必ずある ―S邸―

建築家とつくる「徳島のいい家」。こだわりの注文住宅をご紹介します。

Contents

[1]House photo コレクション
[2]
レポート&インタビュー
住宅取材のプロライターが施主と建築家にききました

[3]
建築家プロフィール
[4]
設計コンセプト
[5]
建築データ


House photo コレクション

▲【外観】シンメトリーな切妻の大屋根が美しい。ガラス戸による開口部を連続させることで、庭と一体となった周辺環境の豊かさを屋内へと取り込んでいる。

▲[徳島県産杉]自然乾燥の杉材を使い、職人の手によって丁寧に施工された屋根裏まわり。入念な配線や照明計画が、美しい内観づくりを実現させている。

▲[ダイニング]キッチンに隣接する1階広間。屋根の形状を活かした吹き抜け空間は、木材の心地良さに包まれている。北側にはリビング階段を設置。

▲[和室]木の香りが心地良い2階の和室。カラフルな床の間には、書道が趣味というご主人の作品を飾る予定。ゲストの宿泊スペースとしても活用している。

▲[ランドリールーム]家のセンターに配置された洗濯室。上部には2階広間とつながるバルコニーを設けるなど、使いやすさとデザイン性を高いレベルで両立している。

▲[セカンドリビング]夫婦のプライベート空間となっている2階広間には、内と外をゆるやかにつなぐバルコニーを設置。雑木林や山の風景も、暮らしの一部となっている。

▲[大きな本棚]バルコニーから見た2階広間。つくり付けの本棚によって空間をゆるやかに仕切ることで、奥にある書斎やトイレの開放感もキープしている。

▲[ピクチャーウインドウ]庭の風景を巧みに取り込んだ玄関。お父様の趣味が写真撮影ということもあり、将来的には家族のギャラリースペースとして活用する予定。

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レポート&インタビュー

二世帯の家族を
みんな幸せに

「お施主様が探し出した土地のポテンシャルを最大限に引き出し、そこにしかない自然の恩恵を感じながら、ずっと暮らしていける住まいをデザインすること」。それが、建築家の新居さんが持ち続ける信念だ。

「都会の人から見れば、自然豊かな徳島の住環境は本当に恵まれています。しかし、近年では国の方針にとらわれるあまり、住まいの性能面を追い求める傾向が強くなっている。数値だけでは判断できない本当の心地良さや、季節感のある豊かな暮らしを提案するのが、私の役目だと思っています」(建築家・新居さん)

今回の家づくりでは、家の南側にある小高い山に着目。この象徴的な風景を暮らしに取り込むため、家族が集う1階広間を南東側に配置した。庭と一体となった雑木林や山の風景は、その場所が住宅密集地であることを忘れさせる。

「“家”と“庭”と書いて“家庭”。前山という大きな環境を意識した外部空間をつくります。その庭は、庭づくりが好きなお父様が豊かな老後を過ごすための場所でもあります。今はご夫婦の二人暮らしですが、将来的に二世帯で暮らすようになってからも、適切な距離感でそれぞれが楽しく暮らしていけるよう配慮しています」(建築家・新居さん)

たとえば、お父様の部屋は地域の気配を感じられるよう道路側に配置。1階広間との間にキッチンや洗面所を緩衝空間として配置し、世帯の暮らしを緩やかにつないでいる。

知恵と工夫で
自然の恩恵を活かす

地元の杉材をふんだんに用いた室内空間の心地良さも、綿密な建築デザインによってもたらされたものだ。切妻の大屋根の形状を活かした吹き抜け空間を見上げれば、天井の細部まで職人による手作業が活きている。

「一般的な工法では天井で構造や配線を隠しますが、すべてを露出させることで木材が持つ美しさや機能性を引き出しました」と新居さんは話す。

木材は長時間かけて自然乾燥させたものが使われており「ほかの住宅で使われている杉材と比べても香りがいいし、毎日の眠りが深くなりました」とご主人にも好評だ。

ほかにも、深い軒による光のコントロールや、住まいを自然に循環するよう設計された風通しなど、日本建築の知恵と工夫を結集しながら数値には表れない快適さを創出している。

また、日々の家事を快適にしたいという奥さまのご要望を受け、庭につきだすような形で専用の洗濯干し場を配置。雨風に左右されることなく広々とした空間で洗濯が干せるため、共働き世帯のストレス軽減につながっている。

「建物に合わせて生活をするのではなく、自分たちのスタイルに合わせた家づくりを実現することができました。これも新居さんのおかげですね」とご主人。

目に見える豊かさと、見えない豊かさの両方が、この住まいにはあふれている。


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Sさんの夢を叶えた建築家

[プロフィール]
新居照和
1954年生まれ、血液型A型、魚座。
関西大学大学院修了。
インド留学、B・V・ドーシ研究所、アフマダバード環境工科大学大学院美術科修了、東京・沖縄の建築事務所を経て独立。
一級建築士、四国大学、阿南高専非常勤講師。

新居ヴァサンティ
1959年ボンベイ生まれ、血液型AB型、乙女座。
アフマダバード環境工科大学大学院修了。
B・V・ドーシ事務所、東京・沖縄の建築事務所を経て、新居建築研究所を共同設立。

【新居建築研究所】


S邸の設計コンセプト

(建築家より)毎日のストレスや忙しさから心身が回復できるように自然素材をふんだんに生かした住空間をつくる。自然乾燥させた地場杉材を使用する。住宅団地の南側にある小高い山の緑に応答するように木造架構を組む空間をつくり、様々な居場所を包む。それぞれのライフスタイルと価値観をもつ二世帯がともに楽しく暮らしていく住まいとして、個性のある居場所が適度な距離感を保ち、外部環境と関係性をもつ多彩な暮らし領域を確保する。


建築データ

■家族構成:夫の父、夫婦
■構造:木造2階建て
■工法:在来軸組工法
■敷地面積:335.4平米(約101.6坪)
■床面積:
合計 133平米(約40.2坪)
1階 83.8平米(約25.3坪)
2階 49.2平米(約14.9坪)
車庫 25.7平米(約7.8坪)
■スケジュール:
設計期間:2015年5月~2016年4月
施工期間:2016年5月~2017年3月
■設計監理:新居建築研究所
■施工:アズマ建設

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