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徳島の建築家が考える木造建築

WOODEN_ARCHITECTURE_01
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晴耕・雨読

■徳島の建築家が考える木造建築
[施設編 #001]

[宿泊施設]
施設名/晴耕(せいこう)雨読(うどく)
所在地[晴耕]徳島県三好市東祖谷落合114
[雨読]徳島県三好市東祖谷落合140
設計・監理/空間計画研究所
施工/[晴耕]中平建工、[雨読]昇住建
宿泊に関する問い合わせ/桃源郷祖谷の山里


■「晴耕・雨読」について
~建築家・喜多順三より~

この建物は三好市東祖谷山村落合重要伝統的建造物群保存地区の中腹に位置する。主屋と隠居屋、小さな小屋が石垣で造成された細長い敷地に一列に並ぶ、この地方の典型的な屋敷構えを有する民家である。

空き家となっていたものを三好市が借り受け、リノベーションを行い、主屋を「晴耕」、隠居屋を「雨読」と名付け、宿泊施設として活用している。

リノベーションにあたっては、2棟とも伝建地区内の特定物件であるため、外観は保存計画に基づいた復原を行い、内部は祖谷の民家の特性を生かしながら、宿泊施設にふさわしい快適性を確保することが求められた。

主屋、隠居屋ともに茅葺きの屋根を組みかえて、勾配の緩いトタン葺きの屋根にする「小屋下げ」や一部に増築が行われていたため、外観は当初から大きく変わっていた。

そこで小屋組や外壁の痕跡調査を行い、屋根は茅葺きに、外壁は土壁の上にこの地方独特の仕上げである真竹を熨した「ヒシャギ竹」張りであったことが判明し、当初の形態、仕上げに復原している。

内部は空き家が永かったためか、生活様式の変化に伴う改変は少なかった。祖谷地方の民家の空間特性を損なわないよう、既存の間取りや当初の設えを生かしながら、宿泊施設に求められる機能を配置している。

隠居屋には浴室を設けるスペースがなかったため、南側の小屋の形態をそのままに、浴室棟として新築している。

冬季の寒さ対策としては、外壁や床下には断熱材を施し、外部建具は雨戸+ペアガラス入りの框戸+障子と三重にするなど、機密性と断熱性を高めた上、床暖房を施した。

耐震性能は限界耐力計算により確認、いずれも限界変形角は1/20rad(ラジアン)以上を確保している。


■建築データ

敷地面積/—
延床面積/晴耕:82.60平米(約25坪)、雨読:64.76平米(約19.6坪*浴室等を含む)
最高の高さ/晴耕:7.92m、雨読:6.56m
軒高/晴耕:3.83m、雨読:2.73m
地域地区/—
主体構造/木造
基礎/玉石基礎
屋根/茅葺き
外壁/土塗壁の上ヒシャギ竹張り
建具/木製建具
内部仕上げ/珪藻土塗
設計期間/2010年10月~2011年7月
工事期間/2011年9月~2012年3月


■建築家 紹介
建築家:喜多順三さん
喜多順三
Kita,Junzo

空間計画研究所

所在地/徳島県徳島市安宅1-5-11
tel.088-652-7887

【所属】
日本建築家協会、日本建築学会、徳島県建築士会

【プロフィール】
1979年 東京工業大学建築学科卒業
1981年 東京工業大学大学院 社会開発工学専攻修了
1981~99年 JA設計
1999年 空間計画研究所設立

■木造建築への思い

三好市東祖谷落合集落や海部郡牟岐町出羽島の民家の保存修理に関わることが多いため、伝統工法で建てられた木造建築に触れる機会に恵まれている。

これらの建築物は、その土地で入手可能な木材や土、石、植物などの材料が多用され、取り壊されることがあっても、柱材や梁材、壁土などは再利用される循環型の仕組みを持っていた。

さらに、微地形を利用した災害の備えや、気候風土に応じた構法や様々なディテールなど、建築の持続可能性を考えるうえで学ぶべき点がとても多いと思う。

また、木造建築、特に伝統工法の場合、修理の容易性を特徴として挙げることができる。

様々な仕口や継手を用いることで、柱の交換や根継ぎ、梁の架け替えなどができ、建築物の長寿命化を図ることも可能だ。

しかし、こうした伝統的な建築技術の継承が困難な状況に直面している。

様々な技術や工法が開発され、新しい木造建築が生まれることは重要なことと歓迎しているが、大工や左官、石工、屋根葺きなどの伝統技術や木材を供給する林業の持続可能性も重要であり、このことに少しでも貢献できればと思っている。
(建築家 喜多順三)

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