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「誠実な建築」建築家・松田公彦さん/東林院弥勒堂

鳴門市大麻町の古刹「東林院」にて

あわわ8月号取材のため「八葉山 種蒔大師 東林院」へ。
実は、西に建築家・伊月善彦さん設計の小さなカフェ「ろうそく夜」

東に、今回のテーマである建築家・松田公彦さん設計の「弥勒堂」

という、大変贅沢な?空間が広がります。

駐車場にあった休憩所も良かった。

▲たまたま出会った方とお話したら、建築家・増田友也さんとお仕事をされた鳴門市役所OBだと分かってびっくり。鳴門ってすごい。

建築家の挑戦が生み出した大屋根の絶妙なプロポーション

かつて茶堂があった場所に新築された弥勒堂は、中央に国指定重要文化財「弥勒菩薩坐像」を奉安する内陣と、その両脇の外陣(廟所)を、大きな瓦屋根が覆う――静謐な緊張感をもった建物だ。伝統的な寺社建築のエッセンスを現代建築の手法で再構築していて、モダンデザインでありながら古刹の境内に違和感なく佇んでいる。

▲竣工時の外観。軒先のラインが一直線にそろっていて気持ちいい。
▲弥勒堂内陣。1年間の環境テストの後、中央に「弥勒菩薩坐像」が泰安される。

特にポイントとなったのは大屋根で、瓦葺きの職人さんとも相談しながら理想のプロポーションを検討。屋根の骨組みを鉄板で成型することで、反りの微妙なニュアンスまで実現することができた。

▲工事中の屋根をドローン撮影。鉄骨が絶妙に美しい。

いくつもの紆余曲折を経て、たどり着いてみれば、それが必然だったと思えるような

スタート当初から考えれば、計画は大きな紆余曲折を経ている。最初の、浄土寺浄土堂をリスペクトしたプランは地下1階・地上1階の正方形だった。地下水の問題で、現在の地上1階のみのプランになり、さらに検討や修正を重ねて、建築家と建て主が共に「必然だった」と思える結果にたどりついた。

実は、建て主である東林院の副住職・加藤一真さんと建築家・松田公彦さんは10年来の交友がある。「きっかけは自宅の設計をお願いしたことです」と加藤さん。「考え方や施工の人とのかかわり方、私たち施主とのかかわり方も素晴らしくて、本当に信頼できる人だと思いました」。親交が深まる中でだんだんと東林院全体のことを相談するようになり、5年前からはコピーライターも加えた3人で毎月「東林院プロジェクト」ミーティングを開催。それが今回の弥勒堂建設や、今も進行中の境内の改修につながっている。
建て主と建築家が信頼しあい、議論を積み重ねて、必然と思える建築が実現する。それはお互いにとても幸せな体験であったに違いない。

▲建築家・松田公彦さんと副住職の加藤一真さん。

■取材地
八葉山 種蒔大師 東林院
徳島県鳴門市大麻町大谷字山田59
毎年11月に開かれる陶器市「大谷焼 窯まつり」の会場としてご存じの人も多いと思う。かつては阿波国八門首(阿波八本寺)の一寺院に数えられる大寺だった。江戸時代前期の大火で伽藍の大半を焼失し寺院は縮小したというが、境内には今も古刹の趣きが色濃く残っている。

〇弥勒堂
2023年2月竣工
構造工法:RC+S造 地上1階
延べ床面積:162㎡
設計監理:MATSUDA Kimihiko Studio
施工:株式会社藤木工務店

■話をきいた人
建築家・松田公彦さん
[MATSUDA Kimihiko Studio]
僕の印象で言えば、松田さんは、いつも何かに挑戦している建築家だ。建築は、突き詰めていくと、必ず何かしらの困難に直面する。技術的な問題だったり、予算だったり…それらと誠実に向き合い、そして挑戦することを楽しんでいる。

加藤一真さん
東林院副住職
建築家・松田公彦さんとは十年来の交友がある。「(建て主として)松田さんにはモダニズムではなく、”松田さんらしい建築”を求めている」と絶大な信頼を寄せている。

■取材者
白井宏治
(あわわ建てようネット初代&4代目コーディネーター)
タウン誌で建築家が設計した住宅を紹介するページを担当。タウン誌『050(ゼロ・ゴ・ゼロ)』編集長を経て、2005年「建てようネット」を立ち上げ、初代コーディネーターを8年間務める。その間に約140組のマッチングを実現した。2023年から4代目コーディネーターとして復帰。

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